「あんた、あんた」
肩を揺さぶる妻の声で目を覚ます。
寒さの続く冬には珍しい小春日和に
つい、微睡んでしまったようだ。
いつの間にか掛けてあった妻愛用の
ひざ掛けに気づき礼を言うと
「あの子らが孫連れて来るんを
楽しみにしとったのに
風邪を引いたらあきまへんさかいな」
いつものように妻がころころと笑う。
肩を揺さぶる妻の声で目を覚ます。
寒さの続く冬には珍しい小春日和に
つい、微睡んでしまったようだ。
いつの間にか掛けてあった妻愛用の
ひざ掛けに気づき礼を言うと
「あの子らが孫連れて来るんを
楽しみにしとったのに
風邪を引いたらあきまへんさかいな」
いつものように妻がころころと笑う。
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お互い髪の毛に白いものが混じり、顔にも皺が増えた。
出会った頃は高校生だった妻も今や
高年と言われて久しい。
「どないしたん?そないに見られたら恥ずかしいわぁ」
顔をジッと見られたことに気づいたのか妻は顔を赤くした。
「またそんなん、言うてから。お年玉の額やら、今時の子供の好きな料理やらを毎日毎日調べてたとちゃうん」
そう言って笑われ、バレて居たのかと頬を掻いて誤魔化そうとした。
永年連れ添った2人の、いつもの幸せな光景である。
窓辺からはほのぼのと朝日が差し込んで来ようとしていた。
「夢、か…」
若々しく張りのある声が口から零れる。
それは己が老爺などではなく、若者である事と同時に彼女は己の妻等ではないという現実を突き付けてきた。
しかし、ふとカレンダーを見て息を飲む。
「初夢…!?」