「あー、楽しみだなぁ」
 優は、テーブルの上で頬杖をつく。
「何がそんなに楽しみなの?」
 彼氏の康孝は、マグカップにインスタントコーヒーを入れてテーブルに置いた。いい香りが漂う。
「これよ、これ。今まで、インスタントコーヒー飲んでたけど、コーヒーメーカーで豆から抽出して飲もうと思って」
 きょとんとした顔をして康孝は首をかしげる。
「ドリップコーヒーから前に何度か飲んでるじゃん。そんなに楽しみ?」
「チッチッチッ、甘いよ。康くん。豆は生豆から作るのよ」
「どういうこと?」
「コーヒー焙煎機で作るのよ。それが何よりの楽しみなんだ」
 康孝は、ドヤ顔の優を保護者目線で安堵した。平和だと感じる。

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