これを踏まえての3幕の、見栄ゆえに後悔多し人生を嘆くオネーギンの姿なのだ。その大きな一つがタチアナであり、そこにドラマはスポットを当てる。なんとも人物造形が深く、これが彼のキャリアの集大成なのか、と感慨深く見入った。
そうなると、リュドミラ演じるタチアナの迷いも際立つ。
昔片想いをしていた男が自分が華やかになった頃に今度は言い寄ってきた、という安っぽい話でもない。二人が多少なりとも1幕で心が交わったと感じたからこそ、彼女は昔フラれた男が言い寄ってきて心が揺れるのだった。

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