五歌 謎時空
京都高専内事務所で総務部所属のベテラン女性職員の彼女
以前補助監督をしていて、結婚を機に内勤に異動した、実は呪力の残穢を見る能力はピカイチ
特に馴染みのある人のならほんの少しの残穢でも、それが誰のものか完璧に見分けられる
高専職員室の隣にある事務所でいつものように
仕事をしていると、声をかけられた
「おはようございます、今お時間いいですか?」
教師兼術師をしている庵歌姫術師が、充電コードを手に立っていた
「すみません、また断線してしまって」
白の小袖から見える手首に、しっかりと絡みついている残穢にギョッとする
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京都高専内事務所で総務部所属のベテラン女性職員の彼女
以前補助監督をしていて、結婚を機に内勤に異動した、実は呪力の残穢を見る能力はピカイチ
特に馴染みのある人のならほんの少しの残穢でも、それが誰のものか完璧に見分けられる
高専職員室の隣にある事務所でいつものように
仕事をしていると、声をかけられた
「おはようございます、今お時間いいですか?」
教師兼術師をしている庵歌姫術師が、充電コードを手に立っていた
「すみません、また断線してしまって」
白の小袖から見える手首に、しっかりと絡みついている残穢にギョッとする
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ぐるりと庵術師の手首を一回りするのは、見間違えようもないあの特級術師の残穢で、思わず二度見する
「申し訳ありません、3ヶ月で断線させるなんて管理が甘いですよね、次は気をつけます」
庵術師は、手のひらの上の充電コードを見つめられたとでも思ったのか、ぺこりと頭を下げてきた
「あっ、いえいえ」
これ断線しやすいですよねと続けようとして、髪に飾られているリボンにも、五条術師の残穢がべったりとついていて、言葉を飲み込んだ
「…?あの…」
「あ、あ、すみません!庵術師はいつも申請先にくださるから助かります、替えのコードお渡ししますね」
一気に捲し立て、用意していたコードを手渡す
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「ありがとうございます、いつもすみません、もう自分で買おうかなと思うんですけど」
「いえいえ、仕事用はちゃんと申請なさってください、何本でもあるのでたくさんお渡ししたいんですけど、管理の都合上一本ずつしかお渡しできなくて」
そう言いながら目を凝らすと、巫女装束の襟元、耳、髪、肩にも残穢が見える
ウエスト、腰まで、生々しく辿った後まで想像させてくるような残穢の残り方を見るのは、既婚者でも恥ずかしい
「それに、庵術師はいつも申請を先にしてくださるので、こちらは管理しやすくて助かってますし」
備品の申請は先にするようにと決まっていても、急だから、となかなかしてくれない術師も多い
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「そんなお手間とらせてしまってますし」
「それがなかなか申請上がってこないパターンもあるんですよ、実は今も一件待ってて」
ついつお口が滑ってしまった
「もしかして」
「はいはーい!オハヨーゴザイマース」
ドアをくぐってきたのはまさに今2人の脳裏に浮かんだ人だった
「ゴジョウ」
「ゴジョウ術師、おはようございます」
やっぱり見間違えようがない
本物の呪力と、庵術師の残穢を見比べて改めて同一だよなと認識し返す
「じゃあ私はこれで」
庵術師のはそう言い終わる前につま先から踏み出し、行ってしまった
特級術師と2人、小走りで行ってしまった巫女装束の後ろ姿を見送る
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「ねえ」
「はい」
「例の申請だけど」
「明日までにしていただかないと東京校に報告しますよ」
「僕これから岡山行かなくちゃいけなくて」
「…代理でもいいです」
「助かるー!伊地知から申請行くからよろしくね、じゃ」
手を上げた術師は、残像を残して消えた
驚く間もなく、渡り廊下の向こうで術師2人の大声が聞こえてきた
「うーたーひーめー」
「追いかけてくんな!」
「なんで逃げんの、やり逃げ酷くない?」
「ちょっと!大声出さないでよ」
.
.
.
モブになりたい
前夜
歌は断線した充電コードを片手に、しまってあるはずの個人で買った予備を探していた
棚の奥まで物を引っ張り出しても出てこない
充電残り22%で朝までは持ちそうにないし、仕方ないからコンビニの割高な充電器買ってくるかーと諦めたところでベランダをノックされた
「…」
手のひらをガラスに当てこちらを覗いてきてる特級不審者
歌は目をすがめ唇を尖らせた
「んもー」
諦めて鍵を開けてやると、黒づくは靴を手にずかずかと上がり込んできた
「やっほー!」
「靴は玄関!」
歌は玄関を指さしてベランダ窓の施錠をしなおした
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「はあい」
そして閃いた
「あ!そうだ!あんた充電コード持ってない?」
「え?持ってるよ、予備の充電器とバッテリーは必需品でしょー」
リビングに戻ってきた五がマジックでもするように内ポケットからコード付き充電器を取り出した
「貸して貸して!」
奪い取ってコンセントに繋ぎ、充電のマークがついたのを確認した
五はそれをじっと見つめている
「何よ」
「なくしたの?」
「断線したのよ」
「…充電終わるまでいていいってこと?」
それを考えてなかった歌は一瞬怯む、が仕方ない
「…う、そうね…貸してくれてありがと…」
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