「ここは……どこ?」
昨夜横になりながらスマホを弄っていた時にうっかり顔面にスマホを落としてしまったと思えば、いつの間にやら見知らぬ場所へ飛ばされていた。古風な家屋やいくつかの鳥居に疎らに配置された板。これらが何なのかは分からないが、一先ず目の前の機械を触ってみることにした。
「何これ、タイプライター?」
色々なボタンを押してみたり回せそうな部分を回してみたが、何も起こらない。どうやらある程度の知識がなければ扱えないようだ。何も出来ない自分に焦りを感じたのか、段々と心拍数が上がるのを感じる。
昨夜横になりながらスマホを弄っていた時にうっかり顔面にスマホを落としてしまったと思えば、いつの間にやら見知らぬ場所へ飛ばされていた。古風な家屋やいくつかの鳥居に疎らに配置された板。これらが何なのかは分からないが、一先ず目の前の機械を触ってみることにした。
「何これ、タイプライター?」
色々なボタンを押してみたり回せそうな部分を回してみたが、何も起こらない。どうやらある程度の知識がなければ扱えないようだ。何も出来ない自分に焦りを感じたのか、段々と心拍数が上がるのを感じる。
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心拍はどんどんと上がり、どうしようも無い恐怖に襲われる。その圧迫感に耐えきれなくて、思わずその場でうずくまってしまった。
「おい。」
頭上から恐ろしく低く、そしてくぐもった重厚感のある声がした。恐る恐る顔を上げると、心臓を槍で貫かれた様な感覚がした。
丸太のような腕と脚、美しい逆三角形の上半身に豊満な大胸筋、鍛え上げられた腹筋……そして極めつけは、首から上が厳つい鹿の様相であった。
「え、かっこいい」
この状況下での第一声がこんなにも間抜けたものであることに、自分自身が驚いた。
「え、逃げる?待って、なんの事ですか?」
「よく見たら貴様……見ない顔だな。新入りか?」
「気付いたらここに居たんです。何が何だか分からなくて……良ければお名前をお聞きしても宜しいですか?」
「貴様が知る必要は無い。いいから逃げろ。それが貴様がここにいる理由だ。10秒やる。その間に行動しろ。」
逃げろと言われたので、もつれる足を必死に動かして一目散に駆け出した。
どこへ逃げるべき?
いつまで逃げればいいのか?
そもそも何故逃げる必要が?
結局あの機械は何?
彼は誰?
「えっと……鬼ごっこ、ですか?じゃあ次は私が鬼の番?追いつけるかな……」
「違う。歯を食いしばれ。」
「え?」
頭に衝撃を感じたと思えば視界がぐらりと歪み、その場に立つことすらままならなくなった。地に伏した後も視界は薄暗く歪曲し、体に力が入らなくなった。
「うーん……」
「ふむ……ナイチンゲール、聞こえるか?緊急事態だ。サバイバーで無いものがゲームに紛れ込んでいる。…………ああ、心得た。」
「よく聞け。今からお前をある椅子に座らせる。少し動くから、出来るだけ酔わないように耐えろ。それで終いだ。」
「ん……?柔らかい……」
段々と視界がハッキリしてきた。自身の手を注視すると、彼の胸筋に自分の手が重なっていることに気が付くまでそう時間はかからなかった。
「ッ!すみません!」
「……構わん。それより少し担ぐぞ。」
「今から貴様にはこの椅子に座ってもらう。吐くなよ。」
「座った後は?」
「勝手に別の場所へ飛ばされる。俺はそこを荘園と呼んでいる。」
「荘園……」
「待って!」
「ベイン。」
「え?」
「ベイン・ペレッツ。俺の名前だ。呼び方はお前に任せる。さっきはすまなかった。」
「ベインさん……」
「なんだ。」
「また、会えますか?」
「嫌でも会えるさ、きっと。」
そう言うと、彼は身に付けている服から1つ角笛の様なものを取り、私に握らせてくれた。