アンドレアス・レクヴィッツ/橋本紘樹ほか訳『幻想の終わりに 後期近代の政治・経済・文化』(人文書院)を読み始めた。
ものすごく革新的な見方を提示しているわけでもないとは思うのだが、現代社会を理解するうえで非常にクリアな見取り図が提示されている。「なるほど~」と思いながら、ついたくさん線を引いてしまう。
本書によれば、現代の欧米社会は三つの階級+ごく少数の超富裕層から構成される。三つの階級とは、躍進する新たな中産階級、停滞する古くからの中産階級、そして下降する新たな下層階級もしくは不安定階級。(続)
ものすごく革新的な見方を提示しているわけでもないとは思うのだが、現代社会を理解するうえで非常にクリアな見取り図が提示されている。「なるほど~」と思いながら、ついたくさん線を引いてしまう。
本書によれば、現代の欧米社会は三つの階級+ごく少数の超富裕層から構成される。三つの階級とは、躍進する新たな中産階級、停滞する古くからの中産階級、そして下降する新たな下層階級もしくは不安定階級。(続)
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居住地とのつながりは薄く、流動的。労働と自己実現とを結びつけやすく、他者との違いを重視する。ジェンダーについてもリベラルな価値観が信条になる。
他方、古くからの中産階級は、従来の工業との結びつきが強く、非大都市圏に在住していることが多い。経済的に困窮しているわけではないが、自分たちの地位が相対的に低下してきたと感じる傾向にある。他者との違いや独自性よりも周囲の人びととの共通性を重視し、秩序や安定性、規律を尊重する。(続)
なお、移民についても、この三つの階級にそれぞれ分かれる。なので一口に「移民」といっても、どの階級の移民をイメージするかで全く印象が異なってくる。たとえば、新しい中産階級の人びとが学校や職場で接するのは同じ階級の移民であり、したがって移民に対しては好意的になることが多い。(続)
両者は地理的にも隔たっており、新しい中産階級は成長していく大都市圏に居住する。ただし、その内部では「魅力的」とされるエリアと「問題が多い」とされるエリアとの隔絶も生まれる。
他方、古くからの中産階級が多く居住する地域のステータスは低下する。教育を求める人びとはそこから大都市圏へと向かい、教育を終えた後にも出身地に戻ることは少ない。(続)
対して、古くからの中産階級の人びとは共同体を重視する「文化本質主義」に引き寄せられている。文化本質主義では集団として共有される文化を重視し、外部からの影響(典型的には移民)に敵対的なことが多い。(続)
他方、多数政党の国では、従来の政党は新しい中産階級と古くからの中産階級とのあいだで態度を明確にすることができず、支持を低下させる。どちらかに寄れば、他方からの怒りを買うためだ。
結果として、新たな中産階級をより明確に体現するリベラルなコスモポリタン政党(緑の党など)と、古くからの中産階級の支持を集める右派ポピュリスト政党が支持を伸ばす。(続)
著者は、今後においてありうる可能性として、三つのシナリオを提示している。
(1)古くからの中産階級の没落が続き、新たな中産階級と新たな下層階級から社会が構成されるシナリオ
(2)急激なデジタル化によって新たな中産階級の大部分が没落し、古くからの中産階級とともに下層階級へと流れ込んでいくシナリオ
(3)少子化に伴う労働力不足により、古くからの中産階級や下層階級の人びとの労働の価値が見直されるシナリオ
(続)