水父(甘々)

あー、と鳥の雛みたくご飯をねだる倅の小さな口に粥を匙で運びつつ、ワシは内心でため息を付く。向かいでご飯をかっこむみずき。せっかく直ったその癖がもどってきた。昨日までゆっくり食事を味わっていたのに…。
悪癖が蘇ってしまった。どうしたら直るのだろうか。

「ごちそーさん!」
「お粗末様でした」

ワシが頭を悩ましているうちにみずきの食事が終わる。挨拶は満点じゃ。

「じゃ、代わろうぜ」
「は?」
「きたろのご飯だよ。俺が早く食って代われば、お前も温かいうちに食えるだろう?」

…みずきの悪癖が蘇った理由に、不覚にもワシは泣きそうになった。

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